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デジタル市場法/デジタルサービス法が採決─欧州委員会がビッグテックに課す重い足枷:第34回 | IT Leaders

EU各国は以前から、GAFAに代表される米国の大手事業者が運営するクラウドサービスによって、EU市民の権利を奪い、EU企業の公正な競争を阻害していることへの懸念を募らせてきた。欧州委員会はこうした懸念を払拭すべく、2020年12月に2つの法案を公表した。1つは、「デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)」、もう1つは「デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)」だ。両法案は、2022年3月、4月に欧州委員会で合意の後、7月5日の欧州議会で採決された。施行は2023年以降と見られる。

デジタル市場法(DMA)/デジタルサービス法(DSA)とは

 2022年7月5日に欧州議会で賛成多数にて採決された「デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)」と、「デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)」。その内容はすでにご存じの方も多いと思うが、改めて簡単におさらいをしておこう。米CNETはDMA/DSAを次のように説明している。

 DMAは、メッセージングサービスを提供しているクラウドサービス事業者(以下、サービス事業者)に対する規制である(画面1)。ポイントはデータのインターオペラビリティ(相互運用性)だ。現状では、サービス事業者のそれぞれのサービスは別のサービス事業者のデータ(メッセージ、写真、ビデオなど)にアクセスできないが、これを可能にする。

画面1:代表的なメッセージングサービスの1つであるメタ(旧社名:フェイスブック)の「Messenger」(出典:米メタ)

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 サービス事業者の中でもとりわけ影響力の強い企業を「ゲートキーパー」と呼び、一段と強い規制をかける。ゲートキーパーとされるのは、時価総額が750億ユーロ、もしくは年間売上高が75億ユーロの企業で、EU内での月間ユーザー数が4500万人以上、年間ビジネスユーザーが1万社以上の事業者だ。GAFA/GAFAMのいわゆるビッグテックをはじめとする大手事業者がここに含まれる。

 DMAにおいて、ゲートキーパーに課される義務は次の4つである。

●データのインターオペラビリティを確保すること

●ユーザーがプリインストールされているソフトウェアを削除するのを妨げないこと

●サービス事業者のプラットフォームに広告を出している企業に広告パフォーマンス測定ツールを提供すること

●サービスを利用している企業が、自社の活動で生成されたデータにアクセスできること

 一方、DSAにおいて、サービス事業者には次の義務が課せられる。

●提供しているプラットフォームで偽情報が拡散するのを取り締まる

●レコメンドエンジンのアルゴリズムをユーザーに知らせる

●特定ユーザー向けの広告を禁止する(幼児向け、民族性、性的嗜好に基づく広告)

 DMAの立法趣旨は、サービス事業者がユーザーに無料でサービスを提供と引き換えに、自社のビジネスのために囲い込んできたユーザー情報を開放させる意図がうかがえる。従来、サービス事業者はユーザーのデータを加工したり、独自アルゴリズムで自社に有利になるように仕向けたりしてきたが、それらの手の内の一部を強制的に公開させようとしているわけだ。今後は、データ収集の方法やアルゴリズムの見直しを迫られるうえ、ビジネス的な優位が揺ぐことも考えられる。

 一方のDSAの立法趣旨は、プラットフォーム上の情報が公正で信頼に足る情報であることをプラットフォーム運営者が厳格に管理する義務を負わせるもの。これまでユーザーはプラットフォーム運営者の意図どおりに誘導されてきたが、本来の形であるユーザーの視点、利益のためのサービス利用を取り戻そうというものだ。

両法案の議論をするためにEU議員団が訪米

 独Wirtshafts Wochの報道によれば、2つの法案制定を巡って、EUの議員団が2022年5月に米シリコンバレーに本社を置くアップル、メタ(フェイスブック)、グーグルを訪問したという。この件について、DMAの立案者の1人で、EU議会の首席交渉官を務めるアンドレアス・シュワブ(Andreas Schwab)氏が同メディアのインタビューに答えている。この記事からは、シュワブ氏をはじめとするEU議員団の考えの真意が見てとれる。以下に引用する。

 まず、EU議員団のシリコンバレー訪問の目的だが、シュワブ氏によると規制対象のゲートキーパーをはじめ米国のサービス事業者がDSAとDMAに対してどのような考えをもっているのかを確かめるためだったという。同氏は米スタンフォード大学の教授15人と話し合ったところ、「EUが提案するような規制は絶対に必要だ」と賛同された。ただ、EUも米国だけでなく欧州の企業競争力維持を考慮すると、過度な規制をするべきではないという考えに立つという。

 EU委員会はサンフランシスコに職員を常駐させようと計画している。というのは、今はDSAやDMAの中身を決めるフェーズなので、ゲートキーパーたちと膝を突き合わせて議論する必要があるからだ。

 DMAがGAFAのような米国の巨大事業者を狙い撃ちにしているのでは、という世間の批判に対してシュワブ氏は「それはまったくの誤解。DMAの理念はアメリカンドリームの理念そのものだ。DMAは『だれもが不当に邪魔されることなく、自分のアイデアを実現できる』という環境を整備することにある」と反論したという。

●Next:公正(fair)や自由(freedom)に対する欧米と米国の捉え方の違い

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