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神田「味坊」の農園とラボから届く、絶品通信販売の全貌を潜入取材!【食のカイ・カン 】Vol.5|Pen Online

一面に広がる畑には、小松菜や菜の花、パクチー、葉ニンニクなどが次々に収穫の時期を迎える。収穫期には、梁さんとスタッフは朝6時から畑に出かけ、当日か翌日までに使う野菜を収穫する。

「味坊」グループを経営する梁さん。故郷は、国境に程近い街、黒竜江省の斉斉哈爾(チチハル)。黒竜江を挟んでロシアと接し、西はモンゴル自治区だ。さまざまな民族が生活する地区には、独自の食文化が培われた。山東、四川、広東の各料理の要素を取り込みながら、同時に満州、朝鮮、モンゴルの食を融合。故郷では油絵の画家として活躍していたが、残留邦人だった両親とともに1995年に来日。2000年に神田「味坊」を開く。

つくばエクスプレスの六町駅に着くと、梁さん自身が大きな送迎車で迎えに来てくれていた。六町のラボに併設された巨大な宴のスペース「吉味東京(ジーウェイドンジン)」の送迎用に購入したものだと言う。しかし、2020年6月のオープン時には街は既にコロナ禍の中、送迎車はスタッフや見学に来る人たちの足として活躍している。取材スタッフを乗せて、車は郊外の自家農園に向かった。まず到着したのは、小松菜と菜の花が混在する縦長の畑だ。

田中開(以下、開) : うわー、広いなぁ、ここ。どのくらいの広さ、あるんですか?

梁宝璋  (以下、梁) : 2800坪くらい、あるんじゃない。ここだけじゃなくて、この辺りにいくつかあって、ラボの方にも別に小さいのがある。

森枝幹( 以下、幹)  :  これは小松菜? なんだか元気が良すぎて、日頃見ているのと違う野菜みたい。花が咲いてるのは、菜の花ですよね!?

: この、茎が紅い野菜は?

: 中国野菜の紅菜苔、あんまり市場で見かけないから、自分で作ろうかなと。小松菜、菜の花、パクチー、葉ニンニク、空豆、色々作ってるよ。向こうのまだ何にも生えてない畑は、今ジャガイモを作り始めたところ。

: これ、食べちゃっていいですか!?

梁 : もちろん、完全な無農薬だから安心だよ、そのまんま齧って!

: 旨っ、何これ!? なんか、おなか減ってきちゃった。

: 小松菜って、ほんとはこんなに甘味があるんだ。料理するのがイヤになるほどおいしい。

:このままでいいじゃん(笑)

: ハハハ、おいしいでしょ!?

天に向かってまっすぐ伸びた、生命力あふれる小松菜は1日に300から400kg収穫され、六町のラボに運ばれる。

梁さんの畑の真ん中で、しばらくの間、穫り立ての野菜を食べる手が止まらなくなってしまった幹さん。

ふたりは味坊農園について次々と質問をぶつけた。

:そもそも、なんで畑やろうと思ったんですか? 自給自足?

:  さっきの紅菜苔とか、葉ニンニクとかって、市場になかなか売ってないし、見つけても高い。それにたくさん使うから、だったら、作っちゃおうかなと。

:でも、実は、市場で買った方が楽だし、色々な手間暇とか考えたら安かったりしませんか?

:  (笑)もちろん、こっちの方が全然高くついてるよ。でも、ちゃんとおいしいし、楽しいからいいの。農業は難しいから何度も失敗もするけど、それがまた楽しい。そんなの自分の畑じゃなかったら、やれないじゃない。仕事なんて、楽しいことがなくなったら、つまんないよ。いつも、いつも、お金だけじゃないから。

:確かに、ここにいると頭がリフレッシュされる感じがする。

:鮮度だって抜群ですよね。普通は、収穫して3日くらいかけて、市場挟んで店舗という流れですから。

: ここだと、前の日か、その朝。それに、ここで夢中で草取りしてると、頭の中が空っぽになって、いちばんのストレス解消になるよ(笑)

市場では高価な葉ニンニクも、自家農園で作ればたくさんできる。何よりも、鮮烈な香りと野菜本来のワイルドな風味が市販品では出合えない味。味坊の料理がおいしい所以は、素材から調味料までを自家製するからに違いない。

自然発酵した白菜の漬物・酸菜(サンツァイ)は東北地方ではポピュラーな食材。豚バラ肉を合わせて炒め煮したスープ料理や、鍋などにも多用する。この後、空いたペットボトルなどに移して、更に常温で発酵させる。

梁さんの故郷、(中国)東北地方の寒期は長い。冬の間、田畑は見渡す限り、雪に埋もれてしまう。野菜は秋に収穫して、晩春まで食べ繋ぐことしかできない。そのため、食材の保存方法の知恵が豊富になっていく。白菜を塩水に漬けて自然発酵する酸菜は、その代表的なものだ。そのほか、大根、高菜、からし菜、唐辛子まで、すべて漬物にして発酵させる。漬物は炒めたり、餃子の餡にしたり、炒飯の具にしたり、唐辛子の漬物はペーストにして調味料になる。

:さっきも菜の花や小松菜、たくさん収穫してましたけど、あれって余ったりしないんですか?

:  余るよ(笑)、だからラボに集めたら、各店に卸した残りは全部塩漬けにして(屋上で)天日に干して漬物にする。昔は冬の間は、漬物しかなかったからね。でも、それがいい味になるんだ。

:最近では、北欧を中心に発酵が世界で注目を浴びていますよね。

:  あの辺りも寒くて、夏が短いところだからね。

:  でも、まぁ中国は注目しなくても、元々そこにあるという……。

:でも、カンちゃんがやってるタイ料理も、暑い地域の料理なのに発酵多いよね?

:保存の知恵が、料理を進化させるのかもしれないね。たくさん採れておいしい旬の時期のものを、どうもたせるか?

:  そうだね、それが庶民の知恵だと思う。私の料理は、みんなお母さんが作ってくれた東北地方の家庭料理だから。

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