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「何回もやらかして、何回も怒られた」。ドイツ移籍のチェイス・アンリ、欧州の名スカウトも評価する成長の源泉 | Goal.com

 ドイツ・ブンデスリーガのシュトゥットガルトと複数年契約を結んだU-21日本代表DFチェイス・アンリ。高校卒業後即海外移籍という選択は、彼が特別だからと捉えられるかもしれない。しかし、決してそうではない。その成長の過程には、粘り強く、時に厳しく彼のポテンシャルを信じ続けた指導者の存在がある。ドイツの名スカウトも評価する、チェイス・アンリの可能性。その源泉を探る。(取材・文=川端暁彦)

■観ていて信じられないようなミス

 初めて臨む本格的な記者会見ということで、18歳になったばかりの青年は随分と緊張しているように見えた。ただ、徐々に時間が進むにつれて、「常に誰に対してもフランクな男」と尚志高校・仲村浩二監督が笑って評する“アンリらしさ”も出てきた。

 周囲の笑顔を一番強く引き出したのはこんなことを語った場面だ。

「仲村監督は本当に第二の親みたいな感じで、いろいろ教えてくれたし、自分何回もやらかしているのに、それでも(Aチームに)上げてくれて本当に感謝しています。あと、そこに梅津(知巳)コーチがいるんですけど……」

 そう言って、会見場でサポート役に回っていた梅津コーチを指差す。尚志のセカンドチームの指揮を執る名コーチは突然の“ご指名”に驚いた様子だったが、この日の主役はこう続けた。

「1年から(当時セカンドチームが出場していた)プリンスリーグ東北に出してもらって、何回もやらかしてしまって梅津さんに何回も怒られた。寮に帰ってから泣いたりもしていたんですけれど、本当に梅津さんに感謝しています」

 中学1年生の夏から本格的にサッカーを始めたチェイスは、尚志に入ってきた当時、「それほどサッカースキルが上手な選手ではなかった」(仲村監督)。ただそれでも、その並々ならぬポテンシャルを買った梅津コーチは、ベガルタ仙台やモンテディオ山形のユースチームや東北の強豪校が揃うプリンスリーグ東北でレギュラーとして起用した。

 非凡なプレーも飛び出した一方、「観ていて信じられないようなミスもあったし、それで落とした試合もいくつあったことか」と仲村監督が苦笑を浮かべて振り返り、また先輩たちから厳しい声もぶつけられたとチェイスも言う。ただ、梅津コーチは時に厳しく叱りつけた一方で、「チェイスを出すと勝てないから、外したほうがいいんじゃないか?」という声を退け、開花を待った。

 チェイスにとっては「本当につらかった」という時期だった一方で、失敗から学んだことが血肉となってもいた。その年の終盤、仲村監督がAチームにチェイスを抜擢してからのシンデレラストーリーに繋がっていくこととなる。

 仲村監督が「目先の結果にこだわってチェイスの可能性を否定していたら、彼は潰れていたかもしれない。梅津コーチのような我慢はなかなかできない」と評したように、彼のサッカー人生における一つのターニングポイント。チェイスがこの場で「本当に梅津さんから始まったので感謝したい」と、特に伝えたくなったのも無理からぬことだった。

■欧州の名スカウトが獲得に動いた理由

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Akihiko Kawabata

 会見では「中学のときとか本当に迷惑ばかりかけていた」という両親への感謝も重ねて口にしていたが、こうした「姿勢」そのものを高く評価しているのがシュトゥットガルトのスヴェン・ミスリンタートSDだ。

 ドルトムント時代にチームスカウトとして幾多の名手を発掘し、香川真司も見出した欧州でも指折りの“目利き”は、日本人選手に共通する特長として「おごることがない」「練習から一所懸命な頑張り屋」「チームプレーヤー」であることを挙げ、チェイスにもこうした美質を見出したと言う。

「背が高くて素早いし、テクニカルな資質もある。そしてサッカーだけでなく、何より人間として素晴らしかった」

 シュトゥットガルトには2週間にわたって練習参加もしているが、ミスリンタートSDは「素晴らしい教育を受けてきたことが分かる」メンタリティに成長性を見出し、獲得に動いたことを明かしている。

 Jリーグ未経験でのドイツ入りを不安視する向きもあるが、ミスリンタートSDはプロ未経験でドイツへやって来るような選手の「受け入れには慣れている」と自信も見せ、「まずセカンドチームに入って自分を磨いてからトップチームに入っていくことができる」と段階を踏んでいくことによって問題をクリアできるという考えを披露した。

 チェイス自身、「米国に9年いたので、向こうのノリには慣れているし、僕みたいな見た目もあっちでは普通なので」と言うように、練習参加を通じて融け込みにくさは感じなかった様子。チームの主将を日本代表MF遠藤航が務めているのも大きな要素で、「あの人から学ぶモノがあると思った」のも、選択を後押しする要素だった。ドイツ語を話さない遠藤が主将を務めることからも分かるように、ネイティブである英語がチーム内の主要言語であることもポジティブな材料だろう。日本人選手がまず苦労する「言葉と文化の壁」が低いわけだ。

 チェイスは4月中にも渡独してトレーニングを開始。まずは「向こうでやるには、もっと筋力も付けないといけない」と語っている意識で体を作り直しながら、セカンドチームを中心に経験を積んでいく流れとなる。

 トップチームでその勇姿を観られるかどうかは現時点で何とも言えない。ただ、ミスリンタートSDは「チーム戦術を理解しないといけないし、改善しないといけない部分もある」と多少時間がかかるであろうことを示唆しつつ、「絶対に活躍してくれると信じています」とも言い切った。

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