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ザ・ウィークエンド 対 エイベル・テスファイ(GQ JAPAN) – Yahoo!ニュース

最高にセクシーなR&Bの作曲者。第55回スーパーボウルでいちばんおいしいところをもっていった男。地球イチうらやましいカノジョの恋人。正体不明のままリリースした3作のミックス・テープでR&Bの世界を一変させたエチオピアン・キッド。ザ・ゴート以外には並ぶものとてないファルセット・ヴォイスの持ち主。ザ・ウィークエンド。本名エイベル・テスファイ。

撮影の前日にセンチュリー・シティの録音スタジオで会ったときの彼はオンライン・セラミックスの黒のフーディーとこざっぱりしたスウェット・パンツという出で立ちだった。重そうな荷物でパンパンになったバックパックを右肩に下げたその姿はウーバーの配達員みたいでもあった。午後6時の待ち合わせに7分遅れてやってきた彼は、そのことを何度も詫びた。

「エイベルとザ・ウィークエンドは別人」という噂はやはり本当だった。パンデミック下、ザ・ウィークエンドは赤いブレザーを着てカエルを舐めて日々を過ごした。一方エイベルはというと、『X-ファイル』をみて過ごした(「あれは誰だって録画するでしょ」と彼はいった)。夜ぐっすり眠るにはどうしたら、とかの話を好んでし、人気のないストリートを散歩してLAを再発見したエイベル。オンタリオ人ならではの礼儀正しさがある。一方ザ・ウィークエンドはというと、映画『ハングオーバー!』でホテルのスイートルームをぐちゃぐちゃにブチ壊すやつみたいな感じだろうか(あの映画の開始後10分ぐらいで行方不明になるやつみたいなのがエイベル、というのもある)。

GQ エイベルとザ・ウィークエンドの違いは?

THE WEEKND(以下、TW) 最初のうち、明確な区別はありませんでした。キャリアを積んで人間的に成長したあとですごくハッキリしたのは、毎晩自宅へ帰るとエイベルになること。で、翌朝仕事に出かけるときにはザ・ウィークエンドに。

GQ ではいま私がインタビューしている相手はエイベルとザ・ウィークエンドのどちらのほうですか。

TW まさにジキルとハイド的なシチュエーションのただなかでお困りというわけですか(笑)。

GQ そうだとして、エイベルとザ・ウィークエンドはどちらがジキルでどちらがハイドなんですか。

TW そんなの、わかんないですよ。エイベルだってときにはやらかすこともあるし。でもたぶん、ザ・ウィークエンドがハイドでエイベルがドクター・ジキルでしょう。

GQ みんながあなたのことを凶悪そうな人だと思ってることについては、どうですか。

TW 俺は凶悪なやつじゃないですよ。作品世界的にはそうだし、過去にヤバい時期を過ごしてはきましたけど。暗黒時代の経験はいまインスピレーションの元になってるし、俺がほんとに凶悪なやつだったら、それを音楽やアートに昇華することはできなかったんじゃないですか。

GQ 正体を明かさなかったのは、当初なにを考えて?

TW なんだろう。この件は掘り下げたら深い話になる気もするけど、とりあえずいえるのは、イメージ戦略上狙ってそうしてたわけではまったくないってこと。『ハウス・オブ・バルーンズ』を出した時点ではまだ全然顔が売れてなくて、俺はそれ、すごくいいと思ったんですよ。なぜならイメージ的なバイアスなしに音楽だけ聴いてもらえるから。いろんな音楽ジャンルのなかで特にR&Bがそうなんだけど、音楽の印象に及ぼすアーティストの見た目の影響がすごくデカいという問題があって。

GQ 最初に自分の歌声がタダモノじゃないとわかったのはいつのこと?

TW 子供のころから常に歌いたい一心で、授業中だろうと夕食の席でだろうとおかまいなし。歌っていいときと悪いときの区別がついてなかったから、よく叱られてましたよ。(ケンドリック・)ラマーは俺の大の親友ですけど、彼に会うまでほめられたことはなくて。俺が歌うのを聴いてラマー曰く「『カナディアン・アイドル』(テレビのオーディション番組)に出て歌えよとかなんとか」。

GQ で、その番組には、出ようとしたんですか。

TW まさか(笑)。でもラマーにほめられたから女の子たちの前で歌ってみたら、すごいウケて。その次のウケた体験は、「ホワット・ユー・ニード」を出したとき。ザ・ウィークエンド名義の最初の曲。当時は誰もその正体を知らなかったし、ちょうど苦しかった時期で、友達のツテでアメリカンアパレルの店の仕事にありついて服を畳んだりしてたわけですよ。そしたら誰かがあの曲をかけて。歌ってる本人が俺だなんて、誰もわからない。

GQ そのときは、嬉しくて飛び上がった、みたいな?

TW いいえ。聴いてる人たちがどんな顔で、なにを思って聴いてるのかを観察してました。バイアスなしに音楽だけを聴いたときのリアクションが大事だっていいましたよね。で、聴いた人たちは「これはすげえ」って感じで、だから俺も「おお!」みたいな。

GQ ザ・ウィークエンドの名前の由来は?

TW 『ザ・ハウス・オブ・バルーンズ』として出たアルバムの名前が当初それ(The Weekend)だったんですよ。アーティスト名はまだアベルで。でも自分の名前が好きじゃなかったからザ・ウィークエンド(The Weeknd)に。

GQ ザ・ウィークエンドというアーティスト名はいまでも気に入っていますか?

TW 最初に決めたときと同じくらいいまも、という意味?

GQ はい。

TW 前ほどは好きじゃないし、といって別に嫌いになってもいないけど、いまだったらまた別の名前にしてもいいかな。エイベルの名からちょっと逃れるオプションとしてそういうテもある状態というのは悪くない。ザ・ウィークエンドという名前は以前のほうが好きだったけど、でもいまは本名のエイベルが大好きになってます。

GQ エイベル名義で曲を作ろうとか、思いますか?

TW ていうかそれ、すでにやったような。それと、ファンは俺のことをザ・ウィークエンドとは呼んでないですよ。エイベル、です。ちょっとややこしいけど、要はザ・ウィークエンドもいまやそれだけの歴史をもつにいたったということで。歴史って、まだ終わってないですけど。

GQ ヴィデオのなかでザ・ウィークエンドはたいがい殺されたりぶちのめされたりひどい目にあってますけど、ご自身、そういうのがよっぽどお好きでとりつかれてたりするんですか?

TW それってマトモな感覚じゃないぞ、ってことですか? エイベルのなかからザ・ウィークエンドを除去してしまいたい俺というのがいるわけです。ああいうのを見てみんなは自殺願望かよって思うだろうけど、そうじゃない。俺がザ・ウィークエンドをこの世界から追い出そうとしても、やつは戻ってくる。目もくらむような光(Blinding Lights)を浴びて消えたりは当分しません。

GQ 有名人ではない誰かとデートして、相手が舞い上がっちゃってるのを見ながら罪の意識に苛まれた経験、ありますか?

TW ありますよ。自意識過剰にはなりたくないから、あんまりそういうことはしないようにと。できるだけ常にノーマルなシチュエーションにいたいということです。そうだと最高。けたくそ悪いSUVに乗って出かけるんじゃなくて散歩を、みたいなのが。

GQ ネット上では、あなたはシラフ系だとかラリってない系だとかいわれてますが。

TW ラリってないの、好きですよ。

GQ アルコールは?

TW イエス。ヘビーな酒飲みでは昔もなかったしいまもないので、たまにですけど。飲酒という行為に対するロマンチシズムというものがないんです。

GQ クサ系は?

TW やります。

GQ それ以外にドラッグは?

TW ノー。以前の俺はドラッグ頼りで、そこから抜け出そうとしなかった。でも、おかげさまでここ数年かけてサヨナラできて、いまはもう不要です。やりたくもないのにやっちゃってたんだな、というのがわかるようになりました。

GQ 映画なんかだと、ドラッグと手を切るための戦いは長くつらいものですよね。

TW たしかに。で、それに勝つための最後の決めテは家族の存在。なんだかんだいってきたけど、やっぱり家族がほしいし、子供がほしいです。

GQ ではなぜ、「子供なんてほしくない」とかいったんですか?

TW そんなことをいった理由、ということ?

GQ はい。防衛機制かなにかが作動したとか?

TW おそらくは。子供をもつことが自分のキャリアにとって支障になったりはしないか、とか。でもその一方では、子供ができたらそこからいい影響を受けたりもっとインスパイアされたりするかもというのもあって。

GQ それを聞いて、マルマとコラボした「ハワイ」のリミックスの歌詞を思い出しました。「いっそ俺と子供を作ろうよ/束の間の盛り上がりなんかじゃなく/二人にとってのリアルな……」っていう。

TW ちょっと(笑)。でも俺、ウソはいってないですよね。あの歌詞ほどリアルにいってもないし。

GQ ご自身が書いた性的な歌詞について未来の息子ないし娘に説明しなければならなくなったときのことを想像したことはありますか?

TW もちろん。結局のところ俺のアートってそういうものだし、オマエたちの父親はこういうやつだったって、ちゃんというつもりですよ。

今回の取材中、彼がザ・ウィークエンドになったときが一度だけあった。エイベルが発表前のアルバムから何曲か聴かせてくれようとした、その直前。振り向きざま、ニヤッと笑って「いいですか?」。

曲が始まる前に私がノートブックを取り出したり、ボトルの水で喉を潤したりしたいかもしれないと思っての「いいですか?」では、それはなかった。そういう気づかいはアベルならするが、ザ・ウィークエンドはしない。私がまだ準備OKの態勢になっていなかったことを100%わかったうえで「おい、ちゃんと聴けよ」といっていたのだ。実際、彼のいうとおりだった。

曲がかかった瞬間、スタジオにマックの大型トラックが突っ込んできたかのような衝撃を受けた。クインシー・ジョーンズとジョルジオ・モロダーが合体したのを人生最高の夜に聴けたような感じのダンス・ミュージックで、ただしアナクロなディスコっぽさはなし(「コスプレでもない」と彼)。最近流行りのレトロ系音楽と違って最新。ハード。憧れの男子または女子と、着てる服が汗でビチャビチャになるまでヤレるダンス・ミュージック。

「まさにこういうのを作りたくてしょうがなかったっていうアルバムで」とエイベル。このときの感動が頭から抜けなくて、翌朝などは聴きたいと思える曲がなくなってしまった。どれを鳴らしてもソフトすぎるか、またはノれなかった。ハードでかつノれそうなのも全然ダメで、あのときアベルといっしょに聴いた曲のことを思っていた。

『ビューティー・ビハインド・ザ・マッドネス』『スターボーイ』『アフター・アワーズ』ときてその次となる新作はまだ完成前だったが、順調にいけば彼のベスト・アルバムになるのが順当なセンだと思われた。で、だからこそというか、ここで気になるのは『キッスランド』、すなわち3作のミックス・テープの次に出た最初の“スタジオ録音“アルバムのことだ。「アダプテイション」や「ワンダーラスト」といった名曲もあるが、サウンド的にも歌詞的にもビジュアル的にも、『キッスランド』は彼の他の作品と比べて完成度が低い。整理されていなくてゴチャマゼ感がある。ザ・ウィークエンドがティーンエイジャーの頃からずっとクリアな音楽ビジョンをもってやってきたことを考えると、『キッスランド』は異質なアルバムといっていい。

GQ 『キッスランド』のときは、なにがあったんですか。レーベルの意向であらぬ方向へ……とかですか。

TW 全然違って、その真逆。『キッスランド』はレーベル主導なんかではなかったですよ。あれは俺にとっては4枚目のアルバムだったけどデビュー・アルバムでもあって、出る前から周囲の期待はアツかった。その一方、俺としてはやりたいことはその前のミックス・テープ、『トリロジー』にまとめられた3作で全部やりつくしちゃったところがあって。『キッスランド』の前までで30曲も作って独自のジャンルを立ち上げて、気持ち的にはもうすっかり空っぽで。だって1年間のうちに3枚もアルバムを出してドレイクの『テイク・ケア』でもやったんですよ。2011年は。

GQ それは尋常じゃないですね。

TW おまけにそのあとツアーもあって。『ツアーなんてやってたらアルバムなんてムリだね』ってジミー・アイオヴィンにいわれたのが忘れられないけど、でもそのツアーをやりながら作ったのが『キッスランド』だったので。つまりあれは非常にツアーっぽい、ツアー中の精神状態で作られたアルバムなんです。それまでずっとトロントから出たこともなかったし21歳になるまで飛行機に乗ったこともなかったのに、いきなり世界が変わって。

GQ コーチェラ・フェスティバルに出たのが21歳のときで。

TW そう! あれに出るために飛行機に乗ったのが人生2度目。最初はコスタリカへ遊びにいったとき。ツアーで海外へ出て、東京とかアメリカとか。で、いろいろ目新しいこともあったし、なにより音楽作りをやり続けたくなって。あの頃の俺はまだトップまではいけてなくて、ポップ・スターになりきれてなくて、『キッスランド』にはそのときの感じが正直に出てますね。俺は頑固者でヨソからのインプットを拒むようなところがあって、で壁にブチ当たった。友達のベリーのおかげで乗り越えられましたけど。『いま俺がもってるものでできることをやるしかない。でもいまの俺になにがあるんだ!?』っていう状況でできたのが『キッスランド』。

GQ で、そこからどんなことを学んだというか……。

TW 一か八かでやっていくしかない、ってことです。さっき聴いてもらった曲が収録されるニュー・アルバムも、『キッスランド』がなかったら作れなかったし。いまの俺はあのとき身につけた技を駆使して音楽を作ってます。『キッスランド』は俺のアルバムのなかでいちばん誠実で、もっとも素っ裸で、そしていちばん無防備で傷つきやすい感じの1枚です。以上。

GQ レビューや反応に関して、ガッカリとかは?

TW ありました。デキが悪かったというより、聴いた人たちはワケわからなかったんでしょう。だって、作った当人からしてワケわかんなかったようなものですから。

GQ それで、イヤになってしまったりとかは?

TW それは別に。むしろ元気をもらえる一方でした。『キッスランド』のレビューや批評は全部、アンチのバイアスがかかったのもふくめてすべて読みました。ちなみに俺、そういうのを読むの、好きなので。ああいうのを読んで謙虚な気持ちになるのは大事なことだと思うし。

GQ でも、読んで心が傷ついたりは……。

TW それはもちろん、しましたけど。

GQ なのに、なぜ読むんですか? あなたぐらいの地位までいったら、アルバム評やレビューを読む人なんてほとんどいませんよ。

TW ハートブレイク体験はしたくないけど、そのおかげでいい曲が作れるんで。

GQ 初期3部作のときと同じノリで4作目のミックス・テープを作る、という方向はなかったんですか。

TW 正直、ムリでした。最初の3作ですっかりやり尽くした感じだったのに同じ路線でもう1回やるよりは、『キッスランド』のほうがずっと正しかったと思います。『キッスランド』はみんなが聴きたがってたようなのではなかったし、出た当初そんなに手応えは感じてなかったけど、でもあの当時の俺としてはあれしかなかったわけで。いいたいことは全部いえたから、あのアルバムの曲がダメなんてことはないんじゃないですか。

GQ ところで、『マイ・ディアー・メランコリー』(2018年リリースのEPで、初期のムーディーな曲調へ回帰したとして好評を博した)のインスピレーションは?

TW 俺にとってあのEPは、3週間の製作過程がセラピーみたいなものでした。どんなサウンドでどんな詞を歌いたいのかはハッキリわかってて。コーチェラで「コール・アウト・マイ・ネーム」をやったときは俺とギターだけで、お客がいっしょに歌ってくれて、それを聴きながら、ああ、セラピー効果があるんだなと。そのあとブラジルのフェスティバルでも、それこそ8000人とか9000人とかが客席じゅうで絶唱して。あれは、いいものでした。

GQ そのセラピーというかヒーリング効果は、どの時点で発動したんでしょうか。曲を作ったときなのか、それとも……。

TW みんなが聴いてくれた時点で、だと思います。

GQ ご自身にとってのセラピーというよりは、むしろ逆に?

TW どうだろう。要は、いっしょに歌っていい感じだったってことで。自分1人だけ気持ちよくなってるんじゃなくて誰かに与える、共有する。セラピーってそういうものだし、それってリアルじゃないですか。リアルだと、ずっと残るし。

GQ グラミー賞の件(今年5月、『アフター・アワーズ』がノミネートされなかったことを受けてザ・ウィークエンドは秘密委員による同賞の選考システムが「腐敗している」と非難した)は、どういうことなんですか?

TW 俺のアルバムのデキが不十分だったってことでしょう。

GQ まさか、本気でそう思ってはいないですよね。

TW いないですけど、アイツらにしてみたらそうだったんじゃないですか。まだまだだな、ってことで。

GQ ですが、複数の人間による客観的かつ公正な審査の結果、あのアルバムがグラミー賞にノミネートもされなかったなどということが現実に起こりうると思いますか?

TW 選ばれなかったとわかったときはアタマにきたし混乱したし悲しかったけど、いまとなってはもう、知りたくもないです。ホントのところなにが起きたのかなんて。

GQ ほんとに?

TW もう、どうでもいい。以前もいまも、グラミーのためにどうとかなんて考えたこともなかったし、ないので。余計なこと考えないで音楽活動に専念してられればそれでいいです。この件に関しては今後二度と語りません。

GQ で、グラミー賞はボイコット、ということですか。

TW 興味ないですから。次頑張ればいいよとかみんなはいいますけど、それはまあ、いわれなくたって。ただし、頑張るのはあくまで自分のために。

GQ グラミー賞なんて関係ないとして、じゃあ、次のアルバムが成功作かどうかは、どうやって判断を……。

TW 出来上がった時点で次のを作りたくてウズウズしていたら、それは上手くいった証拠です。いままでのもそうだったけど、今回は特にそう。これからも、ずっとそうだといいな。なので、たとえ媒体や表現方法は新しくなっても、音楽から離れるつもりはないです。

見上げたことに、偉大なポップ・スターの例に漏れずエイベル・テスファイもまたザ・ウィークエンドとしての自分を茶化すことができている。たとえば2020年に風刺系テレビアニメ『アメリカン・ダッド』のあるエピソードに出演したときのザ・ウィークエンドは隠れ童貞の役で、しかも股間から光を発するという演出がされていた。その回の脚本の、彼は共同執筆者でもあった。2019年の映画『アンカット・ダイヤモンド』でナイトクラブ「ワンオーク」のクロゼットでアダム・サンドラー扮するハワードのガールフレンドとイチャついたりしたザ・ウィークエンドは、カツラを被ってかつての自分のパロディをやっていた。のべ18カ月にわたった『アフター・アワーズ』プロモーション期間中は、赤いブレザーに黒ネクタイで顔面は包帯グルグルという名無し男のキャラクターに扮することにハマってもいた。

GQ 『アフター・アワーズ』のあの赤いブレザーは何着あるんですか?

TW いっぱいありますよ。

GQ 10着よりも? 15着よりも?

TW えーと……20着ですかね。はい。そんだけあったのと、スーパーボウル用のも。だから合計21着。です。

GQ あんなキャラクターを演じて、どうでした?

TW 気分よかったですよ。新しいプロジェクトを始めてワクワクしてただけでもハッピーだったし、しかも最後はスーパーボウルでも着れて花道だったし。

GQ ところで、映画の脚本を書いたり監督をやったりしてみたいというのは?

TW 映画はマジで大好きなので、いつかゼヒとも。

GQ ミュージシャンになった19歳の頃に好きだった映画は?

TW 2009年の時点で、ということは……三池崇史の『オーディション』。

GQ それはまた、なんともダークな作品を! 過去の映画作品でどれか好きな役をやれるとしたら?

TW ガチで答えますけど、『マトリックス』のネオ。あの映画で俺の人生変わっちゃったし。

GQ そのネオをやるとして、じゃあトリニティ役は誰がいいですか?

TW あのまんま、キャリー=アン・モスで。彼女、最高。

GQ いま、いっしょにやってみたい人は?

TW アーカ。カニエとまた。タイラー・ザ・クリエイター。

GQ いっしょに熱唱した体験で最高だったのは?

TW トム・クルーズが深夜番組で俺の「キャント・フィール・マイ・フェイス」を歌ってるのを見たときはほんとビックリ。だって、子供の頃はフィクションの世界にしか存在しない人だと思ってたから。

GQ 逆に、残念だったことは?

TW 人生で? なんもないです。

GQ ほんとうに?

TW 思いつくかぎり、この31年に関しては。

GQ 30歳の誕生日を祝うことはできましたか? つまり、パンデミックとの関係でということですが。

TW あんなことになる直前だったので、なんとか。そんなデカいパーティではなかったけど。友達らとDJごっこをやったり、たぶん参加者全員ハグしたりで最高でした。合計100人ぐらい。それと、ジム・キャリーにも会えて。

GQ パーティーに来たんですか?

TW そうじゃなく、サプライズで俺んちに来てくれて。でいっしょに朝食へ。前からメールしあう仲ではあったんですけど。

GQ 住所、どうやって知ったんでしょうね。

TW 住んでる場所が、建物でいうと隣の隣なんで。俺ら2人とも望遠鏡をもってて、部屋の窓からお互いの顔を確認しあったりとか。

GQ 望遠鏡ブラザーズ!

TW 30歳にもなってなにやってんだよっていう。

GQ もうちょっとで終わります。ゴキゲンでいるときと落ち込んでるときでは、どっちが曲作りにいいですか?

TW 誰でもそうだけど、落ち込んでるときのほうがいい曲を作れます。俺はそれをよくわかってるから、曲作りのときは落ち込んで自分を傷つけるような精神状態じゃないとダメ。で名曲ができちゃうとそれはもうドラッグ体験みたいなもので、中毒になる。ありがたいことに俺はそのへん、上手くコントロールできるようにはなりましたけど。それと、暗黒時代はもう一生ぶん過ごしたというのもあるし。やっぱ音楽やっててよかったですよ。俺にとっては音楽じたいがセラピーで、だからヘンなセラピーにハマらなくて済んだんで。

GQ マイケル・ジャクソンと比較されることについては?

TW マイケルのことは実在の人物じゃないと思ってるぐらい崇めてて、だからもうワケわかんないですね。ミュージシャンなら誰でもそうだろうけど、曲作りを始めたころはマイケルみたいになりたい一心でやってたから。でも齢を重ねるにつれてわかってきたのは、自分が他の人たちにとってどうなのかというのがすごく大事なんだと。たとえばの話、マイケルにとってのジェームス・ブラウンのような存在としてね。なのでいまは、マイケルの後継者云々ではなくザ・ウィークエンドの初代であることが俺にとってはすごくエキサイティングなんですよ。

Special Q&A for Japan
The Weekndと日本
三池崇史、最高!
GQ GQジャパンからの質問です。日本の言葉や文化を音楽に採り入れていますが、映像やファッションもふくめた話として、どんな感じで影響を受けていますか。

TW そりゃもう影響、受けてますよ。日本の映画にはおおいにインスパイアされてるし、東京へいくときはいつも、できるだけあそこのカルチャーを浴びまくるようにしてて。で、それを仕事にいかす。東京は好きな都市で、チャンスがあればいつでもいきたいと思ってます。俺のファンの人たちと会うのも楽しみだし。

GQ 19歳のときに『オーディション』(1999年三池崇史)を見たそうですが、それってめちゃくちゃススんでますよね。いったいどうやって……。

TW インターネットで。日本の映画には、19歳よりもっと前から興味ありましたよ。実はまず韓国映画から入ったんですけど。キッカケは『オールド・ボーイ』(2003年パク・チャヌク)で、そこから……。

GQ たぐっていって。

TW そう。インターネット、やりまくりで。あと、これはいっておかなきゃいけないことですけど、こっち方面に関してはタランティーノ先生のおかげというのがすごくあって……。

GQ つまり、アメリカにおけるアジア人の代弁者としての……。

TW そうそう代弁者。偉大なる。あとそう、『ダークナイト』(2008年クリストファー・ノーラン)のヒース・レジャーの画像がリークしたじゃないですか。口のところに傷があって。あのときのこと、覚えてます?

GQ みんなすごい盛り上がっちゃって。

TW 盛り上がって。俺もすっかり夢中になっちゃったし。で掘ってくと、あれは『殺し屋1』(2001年三池崇史)の影響受けてるって噂があって。ホントかどうかはわからないですけど、でもそういうことがいちいち、アレなんですよ。俺を日本映画好きにさせてくれて。で、三池崇史の『オーディション』に至ったわけです。彼の作品、いっぱいありますけど、全部みるぞと。ひとつ残らず。

GQ すごい数ありますけど。

TW もう、バンバン撮っちゃう人なんで。三池崇史、最高!!

The Weeknd
シンガーソングライター

1990年2月16日、カナダ・トロント生まれ。2012年に1stアルバム『トリロジー』でメジャーデビュー。その後、2ndアルバム『キッスランド』(2013)、3rdアルバム『スターボーイ』(2016)をリリースし、4thアルバム『アフター・アワーズ』(2020)は4週連続全米1位を記録する大ヒットとなった。2021年2月に開催された第55回NFLスーパーボウル・ハーフタイムショーでの圧巻のパフォーマンスは話題となったばかり。

Photos Daniel Jackson / Styling George Cortina
Words Mark Anthony Green / Translation 森 慶太 Keita Mori

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