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ソニー「360 Reality Audio」は“立体音楽”の新潮流となるか(Impress Watch) – Yahoo!ニュース

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2020年のCESで発表されて以来、とても気になっていたのだが、コロナの影響でなかなか取材することができず、今回ようやく実際に体験することができた。まだ発展途上のものという印象ではあったが、非常に面白いシステムで、大きな可能性を感じるものであった。

実際、これがどんなものであり、どのように聴こえるものなのか、そして360 Rality Audioに対応したコンテンツはどのようにすれば作ることができるのか。すでにリスナー視点の記事は多く出ているので、今回は制作サイドの視点から、この360 Reality Audioについて2度に分けて見ていこうと思う。前編では、ソニーの担当者に、基本的なことをいろいろ伺ったので、その概要について、インタビューの形で紹介する。

■ 360 Reality Audioは立体音場を実現する新しい音楽体験

先日の発表では、すでに海外ではスタートしていた360 Reality Audioの国内における本格展開に合わせ、部屋を高音質の音楽で満たすという全方位スピーカーシステム搭載のワイヤレススピーカー「SRS-RA5000」「SRS-RA3000」が4月発売とあり、てっきりこのスピーカーが本命なのだろうと思い取材に臨んでいた。

実際にデモも体験し、確かに広がった感じで音が聴こえるスピーカーであることは分かったが、これが360 Reality Audioのすべてというわけではないようだった。もっと言ってしまえば、この2つのスピーカーは360 Reality Audioを体験する手軽な手法の一つであり、実際にはもっともっと奥深く、可能性の大きい技術のようだ。

そこについては、ヘッドフォンでの再生によって、その世界観を感じることができたのだが、そもそも360 Reality Audioとは一体何なのか。ソニー ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 V&S事業開発部の横山達也氏、そしてライセンスビジネス推進室の澤志聡彦氏の二人に話を聞いた。

--まずは簡単に、360 Reality Audioの概要について教えてください。

横山氏(以下敬称略):360 Reality Audioはソニーの立体音響技術を使った、立体的な音場を実現する新しい音楽体験です。360度に広がる全球に音源を配置し、それらを球状で動かすことが可能になるもので、クリエイターは創造性のままに、自由な音楽表現が可能になります。これまでステレオのスピーカーで音場を表現するものから、5.1chなどのサラウンドで表現するものへと進化してきましたが、さらに今回360度自由に表現できるものになりました。これはスピーカーで体験することもできますし、ヘッドフォンで体験することも可能です。

--いわゆるイマーシブオーディオというものとして、AURO 3DやDolby Atmos、またNHKの22.2chなど、さまざまな規格がありますが、それらとは異なるものなのですか?

澤志氏(以下敬称略):既存のものと異なり、球状の中央にいて音を聴くことができるシステムであるため、“下方向からも音が聴こえる”というのが他との大きな違いでもあります。制作環境においては、上部に5つのスピーカー、水平に5つのスピーカー、そしてボトムに3つのスピーカーという13chのフルレンジスピーカーがレファレンスシステムとなります。この環境で制作された音源を、たとえばスピーカーやヘッドフォンなどの再生環境で、クリエイターの制作意図通りにリアルに再現することで、これまでにない臨場感を提供しようというものです。

横山:我々としては、360 Reality Audio技術をモノラル、ステレオに次ぐ新しいフォーマットとして、他社にもライセンスし、幅広く訴求していきたいと考えています。

--今回、数多くのコンテンツを配信するとのことですが、いずれも360 Reality Audioを用いた立体音響になっているということなのですか?

横山:そのとおりです。すでに昨年より海外ではローンチしていたのですが、今回邦楽を含め4,000曲以上を国内で配信していきます。その配信は、まず3つの配信プラットフォームでストリーミングサービスとしてスタートさせます。

横山:「Amazon Music HD」はこれまでの配信コンテンツに加えて、360 Reality Audio対応のデータも配信される形で追加料金なしに利用できます。このAmazon Music HDにおいてはスピーカーでの再生が対象です。「deezer」は欧米では著名なサービスですが、4月16日より国内でもサービスをスタート。スピーカー、ヘッドフォン、スマホでの再生に対応します。2社から配信されるコンテンツ内容は、ほぼ同じものとなる予定です。一方、2社とはまったく異なるコンテンツを配信するのが「nugs.net」です。こちらは洋楽、かつ英語でのライブ専用の配信となるため、オリジナルコンテンツとなります。こちらもスピーカー、ヘッドフォン、スマホの3つで利用可能です。

--そのスピーカー、ヘッドフォン、スマホとは、どのような定義なのでしょう。

横山:スピーカーというのは、4月16日に発売予定の「SRS-RA5000」と「SRS-RA3000」の2つ。加えて、「Amazon Echo Studio」を含めた合計3機種が現時点の360 Reality Audio認定スピーカーです。またヘッドフォンはワイヤレスモデルや有線モデルを含め、33機種が対象です。

横山:スマホのほうはAndroid、iPhoneが対象です。それ以外にもNW-A100シリーズ、NW-ZX500シリーズというウォークマンも対応しています。スマホを通じた再生は、どのヘッドフォンでも可能ですが、頭部伝達関数を用いた処理を行なうため、認定ヘッドホンのほうが、より正確に音場を再現することができます。具体的にはスマホで両耳を撮影した上で、その人に最適化させるものです。ウォークマンの場合は、カメラ機能がないので、スマホに「360 Spatial Sound Personalizer」というアプリを入れ、そこで得たデータをウォークマンに流し込んで使う形となります。

--頭の形とともに、耳の形によって、音の聞こえ方は個人でずいぶん異なると聞きます。このアプリ「360 Spatial Sound Personalizer」は、3次元的に写真を撮るのではなく、顔の左右から写真を撮影するだけでいいのですね? またこの場合、スマホで結果を計算するわけではなく、クラウドで行なっているのでしょうか。

澤志:はい、数多くの人の頭・耳を撮影し、計測した結果があるので、写真を元にこれらと照らし合わせ、推定する形となっています。そのため、スマホ単体で照合することができないので、クラウドで処理しています。

--実際に試してみると、処理自体はとてもスムーズに、短時間でできますね。ヘッドフォンで体感する360 Reality Audioは確かに立体的で、上からも後ろからも、そして下からも音が聴こえてきて驚きました。

横山:国内ローンチに合わせ、音質向上を図りました。バーチャライズした際の不自然な響きをなくしたり、ボーカルがクリアでなくなる点を改善し、低音が濁るなどの部分を改善してきた結果、ここまでの音質に仕上がりました。

■ プラグインソフトで制作は可能。簡易モニタリングなどは今後の改題

--360 Reality Audioの規格に合わせて新コンテンツを作るというのは分かるのですが、今回数多くの旧譜が立体サウンドとしてリリースされています。旧譜はどのように360度音響化したのですか?

横山:Billy JoelやDavid Boiweなどのレジェンド、邦楽においては大瀧詠一さんのアルバム「A Long Vacation」なども360 Reality Audioで4月16日から聴けるようになります。旧譜に関しては、古い作品でもマルチトラックのレコーディングデータが残っていますので、これを元に立体化の作業を行なっています。

--実際、どのようにコンテンツを作っていくのか、その流れを簡単に教えてください。

澤志:下図の制作ワークフローをご覧下さい。新録の場合も、過去のマルチトラックデータを利用する場合も、360 Reality Audioにミックスする編集作業を行なった上でエンコードを行ないます。この編集作業は、13個のスピーカーを設置したレファレンススタジオでモニターしながら行なっていきます。

横山:360 Reality Audioに対応したスタジオは、国内ではソニーミュージックスタジオ東京、ソニーPCL~クリエイションセンター~、サイデラ・マスタリングの3箇所。海外ではアメリカ、イギリス、ドイツなど、12箇所のスタジオが対応しています。スタジオでミックスを行ない、それをエンコードしたデータをストリーミングで流し、ユーザーがスピーカーやヘッドフォン、スマホ環境で再生することで、クリエイターがミックスした音場を再現できるというわけです。

--エンコード後のビットレートはどのくらいですか? またサンプリングレートやビット解像度はどのようになっていますか?

澤志:エンコード後のデータには、3つのレベルを用意しています。レベル1は640kbps、レベル2は1Mbps、そしてレベル3が1.5Mbpsです。いずれも48kHz/24bitではありますが、球面上でのオブジェクト数が10個、16個、24個と異なるため、立体感におけるリアリティが変わります。どのレベルのデータを提供するかは、サービス会社の判断によります。通信環境によって切り替えたり、最初からレベル1しか用意していなかったり、または利用者が任意に選択できる場合もあります。なお、エンコードにはドイツFraunhofer IISのMPEG-Hを用いています。

--360度の球面に音を割り当てていく編集はどんなツールを使って行なうのでしょう。またこれをDTMなどで楽曲制作をしている人が利用することは可能なのですか?

澤志:これまでは、技術開発用としてソニー社内で開発したスタンドアロンで動作する制作ツールを用いてミックスしていました。しかし、4月中にはVirtual Sonicsより「360 Reality Audio Creative Suite」というプラグインソフトが発売され、日本でも購入可能になる予定です。海外価格は300ドルで、国内ではAudio Futuresという会社がダウンロード販売の形で提供していく形です。プラグインフォーマットとしてはPro Toolsで使えるAAXとともに、VST3にも対応しています。具体的にどのDAWで利用できるかについての詳細は、発売されてからご確認いただければと思います。

ーープラグインが300ドルで入手でき、ここまでリアルな立体音響が作れ、しかもヘッドフォンで再生できるとなれば、ある種革命的なことではないかと思います。実際、エンコードした音は、すぐにヘッドフォンでモニターすることも可能なのですか?

澤志:制作時は先ほど申し上げた13個のスピーカーでモニターする形になります。エンコードしたデータを、スマホなどで再生するためには、実際に配信サイトでストリーミングする必要があるので、現時点においてはできません。

--先ほど、360 Reality Audioをライセンスしていきたい、という話がありました。クリエイターがエンコードし、配信する場合においても、ライセンス料は発生しますか?

横山:いまは、とにかくコンテンツを増やしていくことが最重要課題でもありますから、クリエイターからライセンス料を取るということはまったく考えていません。また配信プラットフォームも限られており、TuneCoreのような配信アグリゲーターを通じて簡単に配信できる段階には至っていません。今後、こうしたところへも対応できるようにしたいと考えています。

--この立体サウンド、音楽コンテンツだけでなく、映画やゲームといった世界に広げられるとより面白いことになりそうです。たとえばBlu-rayへこのフォーマットを採用するといったことは考えているのですか?

横山:権利問題がいろいろ複雑に絡むこともあり、Blu-rayのようなパッケージに採用するということは現在考えていません。まずはコンサートなど、ライブ配信とセットに展開していくことを目指していますが、今後は映画のサウンド制作にも取り入れていければと考えています。

澤志:ゲームにおいては、やはりリアルタイム性が求められるので、レイテンシーが大きな問題になりそうです。そうした問題が解決したら、非常に面白いと思いますが、現時点においてはまだゲームでの利用は現実的ではなさそうです。

以上、360 Reality Audioについて、いろいろ話を伺ったが、これを簡単に制作現場で実現できれば、非常に面白いコンテンツを作ることができそうだ。まもなく発売されるという制作ツール「360 Reality Audio Crative Suite」を試すことができたら、その機能や使い勝手などを後編としてレポートする予定だ。

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