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開発中止が続くAmazonのゲーム開発部門「Amazon Game Studios」はなぜ失敗したのか? – GIGAZINE



Amazonのゲーム開発部門であるAmazon Game Studiosは、2016年に3本のPCゲームの開発を発表しましたが、記事作成時点で発表済みのタイトルはほとんどリリースされておらず、それどころか複数のプロジェクトが開発途中で中止となったことが明らかになりました。なぜAmazonのゲーム開発がうまくいっていないのかについて、経済メディアのBloombergがAmazon Game Studiosに所属していたゲーム開発者らの証言をもとにまとめています。

Amazon Game Studios Struggles to Find a Hit – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2021-01-29/amazon-game-studios-struggles-to-find-a-hit

Amazon Game Studiosは、当初スマートフォン向けゲームアプリの開発部門として2012年に設立しました。その後、Amazonは2014年に、パズルアクション「Portal」の開発者であるキム・スウィフト氏や、オープンワールドFPS「Far Cry 2」のディレクターを務めたクリント・ホッキング氏らを迎え、PC向けゲームの開発を発表しました。

Bloombergによれば、Amazon Game Studiosは年間5億ドル(約520億円)もの予算を費やしているとのこと。この5億ドルという予算には、Amazon傘下にあるTwitchや、Amazon FireTVやスマートフォン向けに配信されるゲームアプリの開発プロジェクトは含まれていないとのこと。

そもそもAmazonでゲームを開発するというアイデア自体は、ジェフ・ベゾスCEOによるもの。ベゾスCEOはゲーマーをAmazon Primeのエコシステムに引き込むため、「1回のゲームセッションで1万人がプレイできるようにすること」を高い目標に定めていたとのこと。Amazon Game Studiosが発表したゲームの多くが多人数参加型のオンラインゲームだったのはこのベゾス氏の目論見によるもので、特にAmazon Game Studiosで開発されていたプロジェクトのうち2つは社内で「ベゾスゲーム」と呼ばれていたそうです。

Amazonは2014年、9億7000万ドル(約1000億円)という額で、ゲーム実況プラットフォームのTwitchを買収。その後、Twitchは世界最大のゲーム実況プラットフォームに成長。Amazonのライバル企業であるGoogleやMicrosoft、Facebookも独自のライブストリーミングネットワークを構築しようとしましたが、結果としてTwitchを超えることはできませんでした。ベゾスCEOは、このTwitchをAmazon Games Studiosと組み合わせ、Amazon製ゲームの無料マーケティング手段として活用しようと考えていたそうです。

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しかし、Amazonのゲーム開発は、多くのゲーム開発者を集めたにもかかわらず、順風満帆ではありませんでした。Amazon Games Studiosが開発を発表したゲームは、ゲーム実況プラットフォームのTwitchを使った視聴者参加型の多人数シューティングゲーム「Crucible」、植民地時代のアメリカをテーマとしたサバイバルMMORPGの「New World」、古代ローマを舞台にしたMOBA「Breakaway」の3本。しかし、このうちBreakawayは2018年3月31日に開発が中止。スウィフト氏やホッキング氏もゲームの完成を待たずに退社してしまい、2019年にはAmazon Games Studiosで大規模なレイオフが行われたと報じられました。

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Crucibleは2020年5月に基本無料のマルチプレイヤーTPSとしてリリースされましたが、MetacriticPC GamerIGNなど各ゲームレビューサイトやゲームニュースメディアからは厳しい評価を下されており、2020年6月に正式版からクローズドベータに戻った上、2020年10月に開発が中止されたことが発表されました。

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Amazonには「データに基づいて動く」という社内文化があり、主要な決定を承認するためには毎回6ページほどの書類を書くことが求められるそうです。しかし、このデータに基づいて動くという社内文化がゲーム開発界隈の「データよりもユーザーエクスペリエンスを重視し、細かい修正を重ねて洗練していく」という気風と合わなかったことが、Amazon Game Studiosの失敗の一因だと、Bloombergは指摘。

また、BloombergはAmazon Game Studiosのヴァイス・プレジデントを務めたマイク・フラジーニ氏がゲームにそれほど詳しくなかったことが、Amazon Game Studiosの失敗につながったと指摘しています。


ゲーム開発の世界では、プロジェクトで開発しているタイトルのプロトタイプを上司がプレイしてフィードバックコメントを提出するのが一般的。しかし、フラジーニ氏はゲームに慣れていなかったことから、フラジーニ氏から提出されるコメントは「なんでこの色なのか?」や「おもしろそうだが、いつできるのか?」といったものばかりで、とてもフィードバックできる内容ではなかったそうです。

さらにフラジーニ氏が、さまざまなメディアで取り上げられている「今最も人気があり儲かっているゲーム」についての情報を集め、毎月の会議でその流行を追いかけるように指示するため、会議が脱線して現場が混乱することも日常茶飯事だったと、元従業員は語っています。結果としてAmazon Games Studiosで開発されるプロジェクトも他の人気ゲームの後追いばかりになってしまったそうです。

例えば「Nova」というプロジェクトは人気MOBA「League of Legends」の影響を、「Intensity」というプロジェクトは人気バトルロイヤル「フォートナイト」の影響を、そして唯一正式リリースされた「Crucible」は人気アクションシューティング「オーバーウォッチ」の影響を強く受けているそうです。


また、当初目論んでいたTwitchとの連携に失敗したことも大きな痛手となりました。そもそも、Twitch側はAmazon Game Studiosのプロジェクトへの協力に消極的だったとのこと。

例えば2017年にフラジーニ氏が押し進めたプロジェクトに、「Twitchにゲーム販売プラットフォームの構築を依頼する」というものがありました。PCゲーム販売プラットフォームであるSteamは30%の販売手数料を支払うことが義務づけられており、この販売手数料の支払いを避けるため、Amazonが自前でゲーム販売プラットフォームを作ろうと目論んだというわけです。

しかし、肝心のゲームコンテンツに、購入者を引きつけるような大作ゲームがなかったため、Twitch側はこのフラジーニ氏のプロジェクトに全く乗り気ではありませんでした。Amazon Game Studiosの元従業員は、「Steamを回避しようとすれば、Amazon Games Studios自体の市場が縮小することになる」「Steamでゲームを売ろうとしないということは、Amazonで本を売ろうとしないことと同じことだ」と上司に抗議したと証言しました。

その上、フラジーニ氏はAmazon Game Studiosのゲームすべてを、Amazonで開発したゲームエンジン「Lumberyard」で構築することを義務づけました。Lumberyardは2016年にAmazonが発表した完全無料のゲームエンジンで、Amazon Web Services(AWS)と連動するようになっており、AWSサービスへの利用を誘導することでAmazonの収益になるようになっていました。

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しかし、このLumberyardはコマンドが非常に難解で、システムが致命的に遅かったとのこと。そのため、アートを処理したりコードをコンパイルする間、開発者はAmazon プライムビデオを見たり他者のゲームを遊んだりしていたそうです。社内では「LumberyardがAmazon Game Studiosをダメにしている」とささやかれていたと元従業員は証言しています。


Amazon Game Studiosは2019年に、Amazon プライムビデオで配信している人気番組「The Grand Tour」を題材にしたゲーム「The Grand Tour Game」を、PlayStation 4とXbox One向けにリリースしました。しかし、このゲームは不評に終わり、Amazonは発売から1年で取り扱いを中止するという異例の対応を行いました。

Bloombergは元従業員からの数多くの証言から、新型コロナウイルスの影響でテレビゲームへの支出が世界的に大幅増加しているにもかかわらず、ベゾスCEOの肝いりで始まったAmazon Game Studiosが大きな失敗を犯してしまった責任の多くは、フラジーニ氏が担っていると主張しています。なお、Bloombergは、Amazonが2020年に発表したクラウドゲーミングサービス「Luna」にはフラジーニ氏が関わっていないことを強調し、プロジェクトの中止が続くAmazon Games Studiosとは異なり、継続的な取組みが行われるだろうとしています。

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